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Apr 19, 2008

センスのある実験者

研究者にはセンスが必要とよく言われます。でもセンスってなんでしょう。ゼロから実験をおこなうとき,アタリをつけるために適当なパラメータをえいやと決めてから試していくことがよくあります。この決め方に巧い下手があって,センスのある人間だと,実験をどんどん進めていけるような決め方をできるのに,ダメな人はどうどうめぐりの実験ばかり計画してしまう,ということがあります。

センスというやつは,直観やひらめきとも思われがちですが,実はそうではなくて,知識から論理的思考で導きだされるものだというのが今回の話です。

フェルミ推定。ご存知の方も多いかもしれません。昨今のビジネス書でも流行しています。要は,問題を解決するために,仮説をたてて,論理立ててざっくり推測してみましょうというアプローチのことです。少し考えてみましょう。

問題その1。「日本に医師は何人いるでしょう」
日本医師会のホームページでも見ればすぐわかるかもしれませんが,何も知らないときはどこからとりかかりましょうか。自分の知識を総動員してちょっと推測してみます。

・日本にはたしか80ほどの医学部があったはず。
・ひとつの大学の医学部は,1学年せいぜい100人ほどでしょう。
・となると,毎年8000人ほどの医者が誕生しているのでしょうか。
・25歳から65歳まで,40年ほどが,医者の活躍年数としたら,40年×8000人=32万人ほどが日本にいるのかな,と推測。

実際の数は,こちらでも参照してもらうとして,ポイントは,初めて聞くものでもなんとか知っているところから近づいてみようと考えてみるわけです。患者の数や病院の数から推測する方法もあるでしょう。私の場合は,それらの情報のなかで,一番精度の高そうな「大学の数」を出発情報として選んでみました。


問題その2。「一本の桜の木になる花びらは何枚?」

・桜の花は結構密集していますね。大体,5cm3ぐらいに3つほどの花が固まっているような印象を受けます。ひとつの花が5枚ほどの花びらから成るとすれば,125×10-6 m3ぐらいには15枚ほどの花びらがある計算です。
・桜の木は高さ5mぐらいでしょうか。ざくっと計算して,125m3。下部3mほどの高さまでは花びらがないとすれば,花のある部分の体積は50m3程度でしょうか。
・この中に花びらがあるので花びらの枚数は一本の木あたりざっと
(50 ÷ (125×10^-6))*15 = 6×10^6
600万枚といったところでしょうか。もちろん実際の枚数は知りません。落ちて積み重なった花の枚数から推測することもできるかもしれません。

いずれにせよこんな感じで,推測するのが「フェルミ推定」というわけです。コンサルタントは知った問題に出会うことなどほとんどないので,こういう論理的思考力が必要になるとのことですが,改めていうまでもなく,エンジニアや科学者にも不可欠の考え方でしょう。推測の精度を上げるには,精度の高い出発知識や情報からはじめる必要がありますが,それらをいかに組み合わせてほしい情報に行き着くことができるか,これこそがセンスの正体かと思います。

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